配分額 *注記 |
31,000千円 (直接経費: 31,000千円)
1995年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
1994年度: 8,000千円 (直接経費: 8,000千円)
1993年度: 20,000千円 (直接経費: 20,000千円)
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研究概要 |
本研究はDNAテクノロジーをもちいることにより古代社会の構成員の血縁関係を明らかにすると共に,その集団構造すなわち古代社会構造を解明することを目的として分析をすすめ,以下の成果を得ることに成功した。(1)遺跡から複数の個体が隣合わせで発掘された場合,何らかの血縁関係があったのではないかと,これまでは推測されてきた。そこで,STRと呼ばれる領域に関して古人骨DNA分析を行った結果,地下式横穴墓に埋葬された古墳時代の広畑遺跡より出土した古人骨では,それらの間の親子関係を否定する結果は得られなかった。これに対し,甕棺に埋葬されイモ貝の腕輪を装着した弥生時代の花浦遺跡より出土した2体に関しては,その親子関係を否定する結果が得られた。さらに,両個体のミトコンドリアDNA配列は全く異なっており,考古学からの推測に反し,花浦遺跡の古人骨間には母子関係さらには母系の姻戚関係もないことが示された。(2)北部九州・弥生時代の詫田西分遺跡では2つの埋葬様式(甕棺墓と土壙墓)がもちいられている。ミトコンドリアDNAを分析し,埋葬様式(甕棺墓か土壙墓か)を基準に,葬制と遺伝的関係に相関があるか否かをフィッシャーの直接確率計算法にて検定した。その結果,危険率5%で有意な差があると判定された。この結果,次のような可能性が示された。もし甕棺墓と土壙墓が同時期に存在した場合,詫田西分という一つの集団が異なる遺伝的構成と文化様式(葬制)をもった2つの分集団から成立していたこと,すなわち2つの社会階層への分化が生じていた可能性を,甕棺墓と土壙墓がもちいられたのが別の時期であった場合,詫田西分という古代社会へある時期に異なる文化と遺伝的構成をもった人々が流入した可能性が,示された。
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