研究概要 |
初年度は全国25国・公・私立大学・短期大学の学部生3028人に対して,エイズに関する知識と態度・行動の調査を実施した。質問紙はエイズ情報へのアクセスの程度,エイズ予防行動への行動感覚,エイズ感染経路に関する知識水準,エイズ感染者に対する差別意識,エイズに対する感情,エイズ予防のための行動,エイズ教育などに関する71項目から構成された。結果:(1)学年が進むにつれて自己報告されたエイズに関する知識は増大する。(2)エイズ感染者や患者に対して解放的な行動を促進するような知識は学年と共に増大するが,態度の変化は必ずしも顕著ではない。(3)女子学生がエイズに関して家族と話し合いをすることは,エイズに対する解放的な態度を促進するが,男子学生は家族と話し合うことよりも友人仲間と話し合う方が態度の変化が促進される傾向がある。 次年度は大学におけるエイズ予防教育と啓発教育の実態を調査した。全国の国・公・私立大学・短期大学865校の健康管理センターあるいは保健担当者に質問紙を送り549校より回答が得られた(有効回収率63.5%)。 結果:(1)報告されたエイズ予防・啓発教育は学校種別でみると国立・公立・私立の順に実施度は低くなる。(2)実施担当者は保健管理センターや既存の保健・厚生関係の全学委員会で,教職員に対する研究会や手引,新聞,公報の発行などを行っている。(3)学生に対する働きかけで有効なものはエイズ関係の講義,講演会,手引の配布,新聞,公報となっている。エイズの講義を実施することへの障害はカリキュラム変更に時間がかかる,担当者が無い,受講者が少ないなどである。 エイズ予防・啓発教育に対する管理者の関心は少なく,大いに関心ありとする学校は僅かに12.9%である。性体験の多くなる時期の大学生のコンドーム使用率は低く,HIV感染予防・啓発教育は極めて不十分であることが判明した。学生のエイズに関する知識教育よりも行動変容が重要である。
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