研究概要 |
本研究は、被差別部落の民族誌作成を主要な目的とし、東日本では栃木県大平町榎本,西日本では大阪府寝屋川市駒池の両地区をそれぞれ調査地として地元開放同盟の協力を得て研究をすすめてきた。しかし寝屋川市駒池の被差別部落は、規模が大きく且つ都市化が著しいため,当初予定した以上に時間がかかり、民族誌作成までに至らず,本研究終了後も調査研究を維続することにしているが、大平町榎本の民族誌を完成されることががきた。 被差別部落榎本の民族誌は、民族学研究からの初めてのものであり,今後の被差別部落の民族研究にとって欠くことのできないものとなるであろう。 被差別部落榎本の民族誌作成によって、次のような諸点が明らかとなった。つまり(1)被差別部落の民族全てが一般の民族と相違するのではなく、その一部であること、(2)ただし、被差別部落の習俗の一部に、一般からの差別が認められるものがある。(3)榎本は農村であるが、農家・非農家が混在し、日雇いが大きな比重を占めていることと関連し,都市型の民族を示している。(4)経済力の低さを背景に、タテマエよりもホンネの生活が優先しており、そのことが儀礼習俗にはっきりと現れている。(5)被差別部落内が、かつての支配者小頭と他の家々、工作面積の大きな農家と工作面積の少ない農家,農家と非農家等々,幾つかの階層差が認められる。 以上が本研究を通して明らかになった主要な点であるが,これまで被差別部落の特色ある習俗とみられていた事象が、民族全体と関連付けて捉えられるようになった意義は大きいと考える。
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