研究概要 |
当該年度に集約できた奈良平安時代における異体字のあり方を整理した。異体字はいわゆる文章中にもみえ、それはそのまま文献史料の中の木簡や出土文字である墨書土器にもしばしば採用され、いわば共通的に配分されていたものと考えられ、集中して木簡や墨書土器にも認められる。これらの異体字は現行の常用体と同じもの、則天文字と同じもの、まったく関係のないものの三つに分類される。現行の常用体と同じものには、豊,国などが、册天文字には丙=帝などが、それ以外には〓=宅、寤=〓、惚=〓、などがある。これらの異体字はだまっていても、そのまま我国のそれぞれの場面において、適当に採用されたものとみられる。このように異体字が全体として日本に輸入されたのは、漢字の輸入が国家機構によって制御されることなく、自由に行われたことを意味している。この理由については、なお検討の余地があって、なお今後の研究を追求していかなくてはならない。また、同時に日本へ漢字が導入されるにあたっても今のところ、それにともなう作字などの証拠が認められないのも、なお検討の余地を残しているといえよう。
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