研究概要 |
日本の古代仏教寺院に対する考古学的な調査研究は,飛鳥・奈良時代の平地寺院を対象にした研究が多く,特に南都の寺院を主にした傾向があった。しかし本来の仏教寺院の在り方は,山林修行を主にしたものであることから考えるならば、平安時代初期の高野山金剛峰寺や比叡山延暦寺のような山岳寺院の形態が本来の仏教寺院の姿であった。 古代学研究所がすすめている平安京研究に関連して,平安京の周辺に数箇所ある山岳寺院のうち,如意寺は園城寺(三井寺)の別院の一つであり,平安京の東方如意ケ岳の山中にあり,『園城寺境内古図』に伽藍の状況が詳細に描かれている。10世紀に創建され、王仁の乱で廃絶したといわれているが断片的な史料しかなく,創建年代・社殿・僧侶の生活などに関する寺院史は殆ど解明されていなかった。 本研究では,『境内占図』に描かれた伽藍と現在の地形に注目しつつ,性格な地形測量と発掘調査によって,平安時代初期の極めて良好な状態で残っている山岳寺院を解明することとした。 現地調査は平安京調査と同じ方位の基準点を設置し、人口衛星による観測により,全域の25cm等高線による地形図を作成していった。また如意寺の中心部の本堂地区において広範囲に発掘を実施した。その結果,10世紀前半から16世紀の遺物が多量に出土し,旧地形を削平した状況が解し,平安時代前期の10世紀に創建されてから13世紀(鎌倉時代)に改変されて『古図』の姿になったことが解明できた。この調査研究によって,文献史料の極めて少ない如意寺であるが,広範囲にわたる正確な地形測量と発掘調査を並行して考古学的に山岳寺院の諸問題を解明することができた。この意味で今後の山岳寺院研究の基礎となるものといえる。
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