研究概要 |
実際の宇宙空間プラズマ内の磁力線再結合領域で重要な磁気中性線近傍の3次元的構造に関し研究を行った。特に,(1)磁気中性線近傍における電子の慣性長程度の構造を扱うことができる有限電子質量を取り入れた高精度2流体MHDスキーム,ハイブリッドスキームを開発した。それを用いて,磁気中性面でのエネルギー散逸領域からイオン音波が発生し,その波と磁力線再結合をつくるテアリングモードの波がカップルして,強い3次元的乱流場を生み出すことを確認した。次の段階として,この乱流場が,磁力線再結合を加速する乱流抵抗としてどの程度寄与できるか,定量的な研究に着手した。(2)磁力線再結合の3次元厳密解を非対称解に拡張した。対称解・非対称解を合わせた結果によれば,磁力線再結合領域における磁場δBと速度場δVの変動はアルフベン関係|δV|〜|δB|/√4πρを満たすべきである。最近のGEOTAIL衛星の観測を用い,この関係が存在することの証拠を得た。(3)電子の異方的圧力分布およびホール電流の効果を取り入れた1次元平衡プラズマシートモデルを構築し,これまでイオン電流が卓越するとされたパラメタ領域でも,電子電流が卓越する場合があることを見いだした。(4)磁気圏尾の電流層の構造を観測に基づいて調べ,通常仮定されるハリス解型の電流構造ではなく,「二こぶ電流層」の存在確率が高いことを見いだし,これは自己組織化過程の一例としてとらえられる可能性を指摘した。(5)観測に基づき,磁気圏尾部の電磁流体乱流の構造をスペクトル解析法,ウェブレット解析法を使って調べ,3次元ティアリング不安定で作られた比較的小スケールの磁気島が大きなスケールの磁気島(またはプラズモイド)に発展している可能性を示した。
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