研究概要 |
三波川変成岩を,高圧型変成岩の代表的試料とみなし,四国から関東山地に分布する三波川変成帯の地質調査を行った.すなわち,高知県,愛媛県,和歌山県.静岡県,埼玉県地域に分布する三波川変成岩について地質調査,地質構造解析を行うとともに,変成岩のP-T経路解析,放射年代測定のための岩石試料を採取した.また,三波川変成帯と対をなす低圧高温型変成帝として,山口県の領家変成岩を地質調査し,岩石試料の採取を行った. 本研究の科学研究費補助金で購入したエネルギー分散型X線分析装置(EDS)を用いて,付加プリズム深部において形成されたと考えられる高圧型変成岩(主に三波川変成岩)の反射電子線像解析を行い,非平衡組織の検討をふまえて変成ステージ区分を試みた.さらに,波長分散型X線マイクFアナライザー(WDX)により,変成鉱物の元素分布カラーマッピング(CMP)を行い,変成鉱物の顕著な累帯構造・非平衡組織の存在を明らかにした.これらをもとにEDSによる各ステージの変成鉱物の定量分析を行い,各地の変成岩のP-T経路を明らかにした,また,付加プリズム浅部の堆積物中の炭素質物質及ぴ有機物の化学構造を電子顕微鏡,質量分析計,蛍光X線分析装置,CHN分析計などを用いて解析し,付加プリズム内の温度分布と有機物質の化学構造の関係を検討した.紀伊半島の三波川変成岩の白雲母の40Ar/39Ar年代を測定し,変成年代が75-77Maであることを明らかにした.高圧実験装置を用いて,三波川変成岩の脱水反応実験の方法について検討をおこなった. 以上の研究を総合して,付加プリズム及び周辺地域の堆積・変成作用を付加プリズムにおける物質の循環の観点で統一的に説明することを試み,これらの成果について学術雑誌に公表した.
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