研究概要 |
分子配列を制御する因子を明らかにするために,原子レベルで清浄な単結晶基板上でエピタキシャル成長する条件をと外して,凝縮する際の分子自身の自己組織化を制御する因子を解明することに取り組んだ。 10^<-6>Torrの真空中で基板としてAg,Auの多結晶蒸着膜及びSiウエハー(30nm程度の厚さをもつ自然酸化で覆われている)を用いて,分子配列及び構造を赤外吸収強度の偏光特性から決定し,薄膜の成長因子(基板温度,蒸発分子フラックス,成長後の加熱温度など)をパラメータとして調べ,次に述べる結果を得た: ア.Ag,Au基板上では, 【.encircled1.】beta型のフッカビニリデンと4フッカエチレン共重合体(VDF+TeFE)を蒸発させるとgamma型の構造を,alpha型のポリフッカビニリデン(PVDF)を成長させるとalpha型の構造の薄膜が成長した。 【.encircled2.】一様な分子配列で分子鎖はあらゆる方向に向いて成長した。基板温度を上げると若干分子鎖が基板表面に平行に配向したが,成長後に加熱しても配向を変化させることはできなかった。 【.encircled3.】Au基板上では,膜厚が20nm以下では重合が進まない。 イ.Siウエハー上では,beta型の(VDF+TeFE)を蒸発してbeta型の構造を,alpha型のPVDFを蒸発してalpha型の薄膜が成長し,また分子鎖が基板に垂直に配向した。 この結果から,分子鎖の配向や重合を制御するためには,酸化物表面が分子レベルで一つの役割を果たしていることが推定される。今後,酸化物表面の分子認識という観点から研究を進める必要がある。
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