研究概要 |
遠心血液ポンプの欠点を克服した軸シール不要の磁気浮上式のポンプについて,ポンプ効率の向上と溶血特性の改善ならびに生体血液循環系に適したポンプ運転方式の確立を目的としている。得られた主な成果はつぎの通りである。(1)羽根形状,ディフューザの形状の改善を重ねて2種類の形状に集約することができた。1つは16枚羽根で後向き形状,他の1つは6枚羽根で前向き形状であり,両者ともBioPumpよりは溶血は少なく,どちらがよいかについては今後の検討が必要である. (2)インペラ-ディスクとポンプケーシングの隙間での流れのWashout効果は良好であることを可視化によって確認しているが,動物実験では隙間のポリカーボネート表面に白色血栓の凝着が生じ易いことがわかり,シリコンコーティングによって,これを防ぐことができることがわかった。(3)ポンプの運転において,モータ電流一定の条件での運転は,圧-流量特性がスターリング則に近いことがわかり,今後,この方式による運転を試みていく.(4)血液回路中に設けたオリフィスの形状が上流に向かってあるいは,下流に向かって鋭い角ないしは丸味を有する場合について溶血の比較実験を行った。その結果,上流に向かって鋭い角のある場合の溶血が多く,乱流解析と比較した結果,この鋭い角から生じる剪断面が溶血の主因であることがわかった。 以上のことから,本ポンプは長期間の使用が可能な次世代人工心臓としての十分な可能性を有していることがわかった。
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