研究概要 |
本研究では顔表情の記述モデルの構成について検討し,その構成したモデルに基づいて表情の分類および認識実験を行い,併せてモデルの有効性の評価を行った。顔の認識あるいは表情の解析と言ったとき第一に問題になるのは,如何なるモデルで対象となる顔を記述するか,という点である。 この点に関して,従来行われてきたほとんどの研究では,顔の部分構造,すなわち,眉,目,鼻,口等の輪郭から抽出した特徴点を用い,これらの特徴点の2次元的な配置関係および動きの情報を基にして,顔それ自体または顔表情を記述するという方法であった。しかし,顔の表情は単にこれら特徴量の物理的な動きだけで決まるものでない。例えば,能面はそのわずかな動きで表面の陰影を変え,この陰影の変化によって表情を変えることができる。一方,歌舞伎などでは陰影表情よりもむしろ,色表情を積極的に用いることで表情を演出している。すなわち,表情には単に特徴点の物理的動きだけでなく,顔表面の濃度分布,色分布が大きく関わっているということになる。したがって,表情を解析するためのモデルには,単なる特徴点の物理的な動きだけでなく,顔表面の濃度分布の変化や色分布の変化をも記述できるものでなければならない。 当研究機関では,上記問題を解決できるような新しい顔表情の記述および認識に関する研究を行っており,当研究機関独自の方法として,濃度分布に着目した“等濃線分布"に基づく方式を提案してきた。 等濃線は地形図の等高線,あるいは天気図の等圧線および等温線に対応するもので,その自動抽出が容易であるだけでなく,その中に顔の3次元構造が良好に反映されているという特徴をもつ。 本研究では等濃線分布に基づく顔表情の記述方式として, (1)等濃線分布の対応関係に基づいた方式 (2)差分画像を基にした方式 の2つの方式について検討した。 4表情(喜び,悲しみ,怒り,驚き)合計54枚の表情について分類実験した結果,45枚(83.3%)の表情について正しく分類し,提案方式が有効であるとの見通しを得た。
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