研究概要 |
現在の走査型力顕微鏡は長さ200ミクロン程度のカンチレバ-の先端に走査用の探針を固定し,その探針を用いて試料表面の走査を行っている.探針に作用する力はカンチレバ-の変位として検出される.従来の走査型力顕微鏡では,カンチレバ-の変位を1軸の光てこやレーザー干渉針を用いて検出している.この方法では,カンチレバ-の変形を一意に検出することが出来ず,結果的に探針先端に作用する力をベクトルとして検出することや,探針先端の軌跡を知ることはできない. 本年度は,このような問題点を解決すべく,光てこ検出系を2軸有する走査型力顕微鏡を作成し、走査実験を行った.前年度の観察に加え.更に装置の改良を行った.その結果,原子オーダで探針先端の挙動を明らかにすことが可能となった。以下に得られた知見を列挙する。 (1)雲母を走査した場合,探針先端が離散的な吸着端の間をジグザグ状に移動することが原子レベルで直接観察された.ここで直接とは,多軸光てこ系でカンチレバ-の変位が求められるため、探針先端の座標が一意にリアルタイムで求められるということである. (2)雲母をその表面の法線方向を軸として回転させた上で探針を走査した場合、探針は同じく離散的な吸着点の上をなぞる.但し,走査軸と結晶方位がなす角度によって得られる像は異なる.作製した装置によって,原子間力顕微鏡の結像原理が明らかにされた. (3)光てこに用いるレーザ光のスポットをカンチレバ-の異なるところに照射し,それによる検出感度や,検出される信号の極性が変わることを示した.この実験結果は,今後カンチレバ-の運動を動的に捉える場合のレーザスポットのセッチングの重要性を明らかにした. 上記の研究生かは,日本応用物理学会誌,アメリカ物理学会誌にそれぞれ掲載されている.
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