研究概要 |
光学顕微鏡を用いたステレオ表示法は,焦点深度が浅いといった光学顕微鏡の有する欠点を逆に利用し,画像処理手法とコンピューターグラフィックスの融合により,奥行き方向の情報を含みかつ視野全体に焦点の合った画像を得る方法である。このシステムの基本的な骨格は,画像処理を専門とする研究室との共同研究により大方の完成を見ており,実用化を目指して問題となる点に関して本研究により検討を行った。 平成5年度において,画像処理の高速化,レンズの防水法ならびにサンプルの保持方法に関して検討を行った。画像処理の高速化は,本研究にて購入したワークステーションにより実現した。処理速度を従来の約1/3とし,1画像の作成すなわち約50画面の画像取り込みに要する時間を3分弱とすることが出来た。また,使用する対物レンズを水中浸漬が可能なレンズとすることにより,レンズの防水法に関しては解決を図ることができ,これに伴って観察方法をスライドガラス上にシリコンゴムを用いた貯水壁を設け,その中に試料ならびに溶液を投入する方法に変更することにより,サンプル保持に関する問題も解決された。 続いて平成6年度には,試料観察に当たっての光量確保ならびにハレーションの除去法に関して検討するとともに,組成の異なる各種混練水を用いた実際のセメント鉱物の水和反応の観察を通して,反応形態の変化と本システムにおいて必要とされる画像処理の速度に関する検討を行った。画像の高倍率化に伴って光量の増加が必要となり,光源を30Wハロゲンランプから50Wハロゲンランプと変更することにより光量の確保を行った。実際の観察画像においては高倍率化によって視野が狭くなるため光量は減少し,極度なハレーションの発生は認められなかった。また,ある程度のハレーションに関しては,画像処理の段階において除去が可能であることが明らかとなった。試料観察を通じて,カルシウムアルミネート系水和物の反応形態の観察に関しては充分な高速化が成されていることが明らかとなったが,カルシウムサルホアルミネート系水和物の反応形態の観察を行うためには,なお一層の画像処理の高速化が必要であることがわかった。
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