| 研究概要 |
構造物の設計に際し,その終局状態をできるだけ正確に予測しておくことは,安全性の確立の上で極めて重要である。終局状態の最も明確な基準は,その構造物の各種外乱下での力学的臨界状態である。本研究の目的は,任意形状弾塑性立体鋼骨組の様々な臨界挙動を確実に捉えることのできる高精度解析法の基礎式を誘導し,そのプログラム・コードを開発することである。基礎式の誘導では,3次元有限回転を考慮し,臨界挙動の精度を確保するために増分摂動法を導入している。本年度までの研究成果を以下に要約する:
(1)サンブナン捩れを仮定した梁一柱有限要素による弾性骨組解析プログラムによって,実用に供された鋼板接合部を有する木造単層ラチスシェル骨組の臨界挙動解析を実行し,実物実験で観察された節点の回転座屈の高精度シミュレーションに成功した。この解析によって,いくつかの節点の回転方向が反転する2次座屈が存在する可能性のあることを明らかにした。
(2)反り関数を用いて曲げ捩れにも対処できるようプログラムを発展させ,H形鋼部材の弾性横座屈挙動の高精度予測解析に成功した。
(3)動的解析に増分摂動法を使用するときの打ち切り誤差制御において,べき級数を偶数べき,奇数べきに分けて制御する技法を提案し,計算精度ならびに計算効率が改良されることを確認した。
さらに現在,弾塑性立体骨組解析のために断面を数分割する梁一柱有限要素モデルによる基礎式の誘導を終え,解析プログラムのデバッグ中である。このプログラムの完成によって本研究目的はほぼ達成される。
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