研究課題/領域番号 |
05452271
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研究種目 |
一般研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
金属物性
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
大嶋 建一 筑波大学, 物理工学系, 教授 (70109271)
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研究分担者 |
末広 直樹 筑波大学, 物理工学系, 助教授 (00114512)
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研究期間 (年度) |
1993 – 1994
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研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
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配分額 *注記 |
4,900千円 (直接経費: 4,900千円)
1994年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
1993年度: 3,900千円 (直接経費: 3,900千円)
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キーワード | 金属ナトリウム / マルテンサイト変態 / 形状記憶効果 / 組成ゆらぎ / X線散乱法 / 中性子散乱法 / インキュベーションタイム / Huang散乱 / 中性子小角散乱法 |
研究概要 |
本研究の目的は組成ゆらぎのない単体な物質である金属ナトリウムの一次相変態の機構をミクロな立場で解明することであり、実験手段としてX線回折法及び中性子散乱法を主に用いた。その結果、1)bccから9R構造への相転移点(Ms=36K)直上ではTA_2フォノンモードの振舞いに対してまったく異常(ソフト化)が現われない事、2)Ms点直上の温度で一定に保持しておくと約2時間後に突然相変態するという新しい現象(この時間をインキュベーションタイムと呼ぶ)を見い出した事、3)母相のブラグ反射は変態後、著しく広がり歪みが導入された事、4)電気抵抗の温度変化からMsからの温度差増大に伴いインキュベーションタイムが長くなる事、が判った。これらの事実を基にさらに中性子小角散乱実験を行い、低温相構造をもつ領域の大きさを調べた。単結晶試料を10Kに保持し、充分な時間を経過した後の2次元の強度分布を測定し、諸補正を加えてフーリエ変換した。その解析によりクラスター自身の大きさは120A程度で最近接のクラスターとの距離はほぼ320Aと見積ることが出来た。比較のために、やはりマルテンサイト変態を示すIn-Tl合金に対しても同様な散乱実験を行い、相変態点直上でインキュベーションタイムを観測した。これらの結果・解析を基に金属ナトリウムの一次相変態は次の様に考えることが出来る。つまり、相変態点直上までは格子力学的に見てまったく変化が生じない事、古典的な相転移点よりわずか高い温度領域で遅延を伴う新しい相変態を見い出した事、一度変態すると結晶中にイントリンジックな歪みが入り元の状態に回復しない事が特徴である。今後この種の一次相変態機構のミクロ構造的な解明に対して温度だけではなく時間に対する応答の測定を行うことが非常に重要であることを提言出来たことは有益な研究成果であると信ずる。
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