研究概要 |
本科研費により超高真空蒸着装置を設計製作した。これはクライオポンプと4元電子ビーム蒸着源により,活性な金属の合金薄膜及び多層薄膜を作製するもので,初期の設計性能を有する装置を完成することができた。この蒸着装置と現有のイオンビームスパッター装置を用いて,種々の金属薄膜及び多層膜を作製し,それらの構造と物性を研究した。また薄膜中の水素の挙動についても調べた。 1.Ni/Ti系及びPd/Ti系2層膜及び多層膜の研究 これらの系は水素吸蔵合金の主要成分を含んでいるが,その構造安定性や原子拡散挙動の研究は実用的にも重要である。薄膜X線回折とオージェ分光による深さ方向分析により,焼鈍に伴う濃度変調構造の変化を解析して,成分元素の相互拡散係数を求め,その温度依存性を決定した。また両系とも相互拡散の結果,界面部分からアモルファス化が起こり,膜全体が均質なアモルファス相に構造変化することを見いだした。このプロセスを断面透過電顕観察によっても確認し,構造変化の自由エネルギー的検討も行った。 2.V及びCr薄膜の弾性率と内部摩擦の研究 BCC金属薄膜中の格子欠陥の挙動や表面状態を調べるため,純Vと純Cr薄膜の弾性率と内部摩擦の温度依存性を測定した。純Vでは固溶酸素による緩和型内部摩擦ピークが観察され,また純Crではネ-ル点での磁気変態による弾性率効果が観察された。これらの現象をバルク結晶のそれと対比して解析した。 3.Pd-Si系アモルファス合金薄膜における金属-非金属遷移の研究 組成を大きく変化させたPd-Siアモルファス合金薄膜を作製し,その原子構造,電子状態,電気抵抗の温度依存性を調べ,金属-非金属遷移の機構について研究した。 4.遷移金属-希土類系アモルファス合金の構造及び電子状態の研究15EA09:Nd-Fe-B,Nd-Ni-B,La-Ni-Mg系アモルファス合金リボンを液体急冷法で作製し,その原子構造と電子状態及び結晶化について研究した。またそれらに及ぼす水素吸蔵の影響についても調べた。
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