研究概要 |
平成5年度までは多素材押出し法による銅および銅合金中空品成形の可能性を探る第一段階として,銅合金の中では高温強度が比較的低いが,鉛を含むため接合性が悪いとされるC3771を被加工材料に用い,パイプの成形試験を行なった.加熱中に素材表面に生じる厚い酸化皮膜が素材同士の接合面に巻き込まれ易いため,大気中で加熱し押出したパイプでは十分な接合強度が得られないが,アルゴン雰囲気で加熱し押出したパイプでは十分な接合が達成できることが分かった.そこで,本年度では純銅および70/30,60/40黄銅などを被加工材料に用い,比較的複雑な断面形状を有する中空形材(断面外形が長方形や楕円形で2つの中空穴を有するものなど)の成形を対象とし,多素材押出し法の実用性をさらに探った.押出し温度700〜750℃,押出し比6〜12,押出し速度10mm/minで成形実験を行なった.成形品の接合状態については,押広げ試験,接合部付近の光学顕微鏡観察および押広げ破面に対するSEM観察などにより調べた.その結果,次のことが判った. 1)成形した異形中空品の穴押広げ率は,押出したままの状態でそれぞれ被加工材料にC1100を用いた場合1.65以上,C2600を用いた場合1.30以上,C3771を用いた場合1.20以上に達し,製品の接合状態が良好である. 2)C3771押出し品の場合,700℃で押出した後550℃で2hrの焼鈍を施すと,穴押広げ率が大きくなり,1.35以上に達する. 3)多素材押出し法は,加熱中に生じる酸化皮膜対策を講じれば,銅および銅合金中空形材の成形法としての実用可能性が十分ある.
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