研究概要 |
ガラス形成系においては化合物の晶出及び準安定相から安定相への相変態は拡散に支配されるため、組成や温度のみならず、時間軸も考慮した非平衡状態図が必要となる。低熱膨張及び低誘電率の特長で知られるアルミノケイ酸塩ガラスの結晶化過程を調べた。MgO-Al_2O_3-SiO_2系では1200〜1400Kにおいて準安定相のμ-コーディエライトが析出した後、保持時間の増加とともにμ-コーディエライトからα-コーディエライトへの相変態が確認された。1400〜1600Kの高温域では安定相のα-コーディエライトのみが析出した。μ-コーディエライトからα-コーディエライトへの相変態はアルミノケイ酸陰イオンの短範囲規則化による等温マルテンサイト変態類似のせん断型変態と結論した。CaO・Al_2O_3・2SiO_2系では1300〜1600Kのいずれの温度においても安定相のアノ-サイト(三斜晶系)が析出した。SrO・Al_2O_3・2SiO_2及びBaO・Al_2O_3・2SiO_2系では準安定相の六方晶セルシアン析出した後、等温保持過程において六方晶セルシアンは安定相セルシアン(単斜晶系)に変態した。準安定相から安定相セルシアンまでの変態に要する時間はSrO・Al_2O_3・2SiO_2ガラスにおいて、BaO・Al_2O_3・SiO_2ガラスに比べて著しく短いことが確認された。この結果はセルシアンの変態過程が陽イオンの拡散が律速段階となり進行するため、イオン半径の比較的大きいBa^<2+>イオンのガラス内の拡散がCa^<2+>イオンに比べて遅かったことに起因する。 上述の結果を基にして、RO・Al_2O_3・2SiO_2(R=Mg,Ca,Sr,Ba)ガラスの結晶化過程についてのTTT図を提案した。過冷却液体から結晶相の析出開始時間は系によらずほぼ一定であり、融点で規格化した換算温度で整理することにより、酸素イオンの拡散に支配される系の粘度に依存することが判明した。 Bi系高温超伝導体融液の凝固過程におけるCCT、TTT図を作成した。この研究において110Kに臨界温度を持つ2223相が850℃付近の狭い温度範囲で250ks以上の長時間の等温熱処理を経ることによってのみ生成することが明らかになった。さらに、2223相の晶出過程での微細組織の変化から、(Ca,Sr)_2CuO_3を核として融体からまず2201相が晶出し、さらに(Ca,Sr)_2CuO_3からのCa,Sr,Cuの拡散により2201相が2212及び2223相に変化することが判明した。
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