研究概要 |
ホタテガイ養殖で必要とされるホタテガイの非接触式形状検出手法を開発するため,画像処理システムの設計を行った。画像取り込みに必要となるホタテガイの反射濃度,サイズと損傷,ホタテガイの標準パターンを求めた。 ホタテガイの右殻と左殻の反射濃度分布のモードは,右殻が高階調域にあり,左殻が極めて低階調域に存在するが,右殻の耳状部の靭帯付近には,左殻と同濃度の黒色部分がある。均一照明光による靭帯付近の部位は,背景との分離がむずかしく,靭帯付近の照度を上げるとともに,背景の反射濃度を低くする工夫が必要であることが分かった。右殻と左殻の判定は,靭帯付近を除く部位を比較することで可能であった。 ホタテガイの殻長・殻高を含む2次元輪郭形状は,周の約半分が円であり,残る部分が5本の曲線と2本の円弧で構成されている。この階層構造を利用して,ホタテガイと他の物との選別が可能である。ホタテガイの形状関数は,ホタテガイの辺縁部を等角度で分割してできる2等辺三角形の長さの集合で表現した。漁業者が目視によって選別したホタテガイの形状分析を行った結果,サイズと損傷度が選別の主要な要素となっていることが分かった。耳吊りに使用しない貝は,大きな損傷が生じており,ホタテガイの標準パターンから容易に選別可能である。しかし,この方法は画像処理時間が長いので,生態観測用には適するが,選別機械への利用には改善を要すると考えられた。 今後は,透過光方式による画像データの解析,ホタテガイに他の物が混入している場合の選別方法,処理時間を改善するための画像処理方法,殻幅方向の情報も同時に得られる3次元計測などを課題として取り上げ,その分析が必要と思われる。
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