研究概要 |
本研究は,農業地域の土地利用と河川の水質環境の保全問題のついて,基礎的なデータの収集と実態把握につとめ,環境保全的見地から地域における土地利用のあり方,などについて検討を行ったものである.以下にその概要を述べる. 畜産複合型畑作地域において,平水時の河川水質環境をみると,流域の差異,水田用排水の有無にかかわらず,T-NのうちNO_3-Nの割合が80%程度を占め,畑地ではNO_3-Nの溶脱が著しいことが確認された.河川の水質環境保全の見地からは,営農規模のみならず,畜舎の位置や河畔林の存在などの土地利用も考慮する必要がある. 大規模酪農地域では,平水時の河川水質濃度は,[林野流域・自然河川]<<[酪農流域・自然河川]<[酪農流域・改修河川]の傾向を示した.流量と水質の関係でも,飼養頭数密度が高い流域ほど水質汚濁は顕著であった.また,飼養頭数密度が類似する農流域間の比較では[自然河川]<[改修河川]の傾向を示し,河畔の林野・湿地が緩衝域として浄化機能を果たしていることが明らかになった. 土地利用と河川水質,畑地・草地のNO_3-Nの溶脱,および流量・負荷量関係式による流出負荷量の推定,などの検討を通じ,農業流域河川における水質環境問題には,営農状況や流域の土地利用が大きく関与していることが明らかになった.なかでも家畜飼養頭数の密度は最も重要な因子であるが,飼養頭数密度が類似する条件では,自然状態の河川形態や河畔林の存在により,河川水質が良好に保たれることも合わせて確認した.農業流域河川の水質環境を保全する場合,汚濁負荷発生源の除去が優先課題となるのは勿論のこと,河畔林など緩衝域のもつ水質浄化機能や汚濁負荷の河川への流入抑制効果を積極的に発揮させるべく,土地利用を再構築していく必要がある.
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