研究概要 |
本研究の目的は,流れと物質輸送が塩分濃度差や水温差による密度傾度に強く影響される河口・沿岸水圏に対する一般的(汎用的)で信頼性(再現性および安定性)の高い動力学的水質環境予測モデルを体系的に開発することにある.具体的には,当該水圏を一次元強混合型,鉛直二次元成層型,三次元成層型(平面二次元強混合型を含む)に類型・特化して,それぞれの流れ形態について密度可変場の非定常分布系の流れ(運動量および質量保存)と水質(保存系および非保存系)の連成系モデルを導出することを目的としている.本研究を通じて得られた成果は次のとおりである. 1.各水圏類型に対する可変密度場(特殊な場合として不変密度場が含まれる)の流れ解析モデルとして,汎用性の高い有限要素モデルを創築し、解の安定性,理論解等との比較による解の再現性,解析の効率性を検証した. 2.一次元型および三次元型の水圏類型について、水質指標の輸送方程式(移流・分散方程式)を基礎として有限要素法による水質解析モデルを創築し,これらと流れ解析モデルとを連成させてボックスモデルに代わるより精緻な水質予測モデルを導出した. 3.鉛直二次元問題では,その流れ解析モデルが河口部におけるプランクトンの鉛直運動と滞留・集積状況を推定するのに利用でき,赤潮の発生機構の解明にとって有用となることを示した. 4.水質環境モデルの発展形としての生態系モデル,河川水質の制御(管理)モデルについて,原初的なモデルを創案し,それらの基本特性を調べた. 今後の課題として,モデルの再現性に関するさらなる検討と,不確定パラメータの推定および同定方法についての考究が必要である.
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