研究概要 |
ディジタル画像の符号化に関する研究の歴史は古く,これまでに多くの提案がなされている.それらの集大成とも呼べるのが,現在国際標準となっているJPEG方式である.JPEG方式は非常に優れた符号化特性を有している,しかし,対象となる画像の精細度が低く,データの圧縮率のみが重要視される背景があり,再生後の画質は犠牲にされる点がある.ところが近年,画像通信を取り巻く様々なハードウェアの性能向上に伴い,処理対象となる画像の高精細化の要求が高まりつつある. 一般に,JPEG方式は高精細画像にも十分対応できるとされてきたが,実験を重ねるにつれて,実際には様々な問題を誘起することが分かってきた.本研究では,JPEG方式で高精細画像を扱う際の問題点について,ブロックサイズ,量子化行列,符号長テーブルの3点について検討を加え,問題解決の方法を示した.その中でも,特にDCTを施すブロックサイズに関しては,より厳密な検討に値すると判断し,さらなる実験を重ね,高画質な再生画像を得る状況を想定した場合に,このブロックサイズを局所的に可変とすることで画像の圧縮効率を改善できることを実証した. 自然画像は,局所的に着目すると各所で特徴に大きな相違がある.これらとブロックサイズの関係は,局所的な図柄が複雑なら小さなブロックサイズが適当であり,そうでなければ大きなブロックサイズが適当であることを突き止めた.原画像から得られる比較的単純な統計量で,局所的な複雑さを計れることを示し,圧縮効率の改善手法を簡略化している.圧縮改善の評価基準は,再生画像を所望の重み付けSN比とする場合に必要となる総情報量とし,その際に考慮すべき人の視覚特性についても検討を加えている.最終的には,符号化処理にまで拡張し,JPEG方式より少ない情報量で画像を表現できるという結果が得られた.
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