研究概要 |
本年度は,昨年度の理論的研究における成果をふまえ,いくつかの実証分析を行った.まず第一に,商圏階層構造の分析手法を横浜市における商業集積に対して適用した.この結果,商業集積の空間的階層構造を記述し,理論的階層構造と現実との齟齬を明らかにすることができた.これは,今後の商業施設計画において極めて有用な示唆を与えるものであった.第二に,手法のネットワーク空間上への拡張を行った.ここではまず,ネットワーク空間を計算機上で取り扱うための新たなプログラムとデータ構造を開発した.その成果を,西宮市における商業施設及び公共施設に適用し,実証分析を行った.その結果を平面空間上における分析結果と比較することにより,ネットワーク空間を用いる場合の計算効率上の利点,及び,より現実的な構造記述に対する有効性を確認することができた.第三に,分析手法及び最適化手法を郵便局施設配置問題に適用し,最適な階層構造と配置の導出を行った.ここでは,平面をクリスタラ-の三角格子で近似することによって計算を高速化し,現実の都市空間への適用を可能なものとした.この実証分析の結果,利用者行動に階層性が見られる施設については,施設配置も階層化すべきであるという結論を得ることができた.第四に,都市内土地利用空間の階層構造を,全国120都市について分析した.ここでは,昨年度開発した手法に加え,新たに空間的ホモトピー概念を用いた分析手法を提案,適用を行った.その結果,都市の発達に関するいくつかのパターンを見出すことができた.以上の実証分析により,空間階層構造の分析及び最適化手法の有効性と,各分野に対する応用性について検証することができた.
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