研究概要 |
UHV架空送電線や長大吊形式橋梁等に代表される長スパン線状構造物は,軽量,フレキシブル,かつ構造減衰が小さいため風による振動が生じ易く,強風に対する安全性の確保が設計上の重要なポイントとなる。と同時に,スパンが非常に長い故に耐風設計上これまで考慮されなかった諸問題についても検討の必要性が生じてくる。通常はスパン方向に一様として仮定する風の作用も,非常に長いスパンの構造物の場合には考えにくく,非一様風の作用下での各対風挙動がいかなるものとなるかを検討することも重要な課題の一つとなる。 以上のことから,本研究はこのような問題の基礎研究として,風がスパン方向のある一部分に局所的に作用する場合を考え,この時の空力弾性振動の特性を風洞実験および解析によって明確にした。なお,実験には埼玉大学工学部所有の50×50cm断面を有する低乱風洞を使用した。 本研究の内容および成果は以下のとおりである。 1)スパンの長いタウトストリップ小型模型を作成してその一部に局所的一様風を当てる風洞実験を行った。模型断面としては,吊形式橋梁を念頭に置いた矩形断面,および超長大斜張橋のケーブルのインバイブレーションを想定した円形断面,の2種類を対象としている。局所風の作用位置および作用長をパラメーターとして対風挙動を測定し,発現モードの選択性等,風の局所性による応答の変化を明らかにした。 2)長スパンケーブルの振動は波動的性質を強くするとの観点に立ち,差分法に基づく波動解析法の基本特性を,サグのない弦をモデルとして数値解析により検討した。また,サグを有するケーブルの振動をアクティブ波動制御する場合を考え,その制御法の特性を調べると同時に,ケーブル内を伝播する連成波動特性を明確にした。
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