研究概要 |
超高真空電子ビーム蒸着装置でpt/c多層膜(2d=80A,N=20及び2d=100A,N=10)をフロートガラスとラミナー型回折格子(刻線数1200/mm,溝の深さ100A,1200/mm,200A及び500/mm,400A)に成膜し、そのX線光学特性を特性X線及び分子科学研究所UVSORの単色化されたシンクロトロン放射光を用いて評価した。成膜の際に、基板の温度を常温と液体窒素で冷却した場合について比較検討した。フロートガラスでは液体窒素で冷却した方が高いX線反射率が得られるの対し、回折格子では常温にした場合に優れた性能が得られる。原子間力顕微鏡(AFM)でそれらの表面の粗さを観察したところ、回折格子の形状は多層膜を成膜しても保たれているが、その表面は明らかに粗くなっていた。これは表面が平坦であるか、複雑な構造を持っているかで多層膜にかかる内部応力が大きく変わるものとして解釈することが出来る。また、基板との密着性を改善するために挿入したCrの厚さが反射率に大きな影響を与えることが明らかになった。界面の平滑化のためのイオンビームの照射はそれほど効果的ではなかった。 シンクロトロン放射光による測定では、X線のエネルギーを1.2keV,1.7kev,2.0keV,2.8keVに固定し、入射角を変化させて0次光、+/-1及び2次光の回折効率と反射率を求めた。その結果を計算値と比較したところ、最大の反射率を得るためには、回折格子の溝の深さと入射X線のエネルギーの間には一定の関係があることが明らかになった。これは今後の多層膜回折格子の開発に大きな指針を与えるものである。
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