研究概要 |
岡山県備中町布賀および広島県東城町久代に産する高温型スカルンに伴うアルカリ岩の成因を明らかにする目的で本研究を実施した。 1.アルカリ岩の産状:両地域のスカルンは、石灰岩中に貫入した石英モンゾニ岩岩脈の両側に最大幅20mにわたって生成されている。これらのスカルンは初生的には(石英モンゾニ岩)・(ゲーレン石帯)・(スパー石帯)・(結晶質石灰岩)の帯状構造を示す。アルカリ岩は石英モンゾニ岩とゲーレン石帯との間に産しており、常にアルカリ岩のゲーレン石側にはザクロ石亜帯、ベスブ石亜帯を伴っている。このような産状から、アルカリ岩は石英モンゾニ岩と母岩として生成されたものであると考えられる。 2.スカルン生成における物質移動:スカルン生成に必要な元素は石英モンゾニ岩側から供給されている。各元素の移動の関係はイオン半径に関係しており、そのメカニズムは拡散作用によることがわかった。 3.アルカリ岩の化学的特徴:石英モンゾニ岩の組成に対して、アルカリ岩中のAl_2O_3Wt.,%はほとんど同じである。そこで、単位体積(100cm^3)当りのAl_2O_3量を一定とした場合における石英モンゾニ岩のアルカリ岩化に伴う移動量を計算すると、SiO_2:-36〜-60,Na_2O:-2,K_2O:-5g/100cm^3,La:-3.5〜2.2,Ce:-5.1〜-2.0,Pr:-0.4〜0.2,Nd:-0.5〜0.5mg/100cm^3の溶脱、FeO^*:-3.9〜20.5,MgO:3〜17,CaO:9〜30g/100cm^3,Ba:87,Li:33,Sr:69,V:66,Zn:81,Zr:28mg/100cm^3の付加を示している。 4.アルカリ岩の成因:初生作用によるゲーレン石、スパー石スカルンの生成に引き続いて、石英モンゾニ岩とゲーレン石帯との間で交代作用が起こり、石英モンゾニ岩から平均して52g/100cm^3のSiO_2量がゲーレン石側へ移動して両者の間にザクロ石亜帯、ベスブ石亜帯を形成した。その結果として、シリカに飽和していた石英モンゾニ岩がシリカに不飽和になると共に、アルカリ元素がスカルン側へ移動しなかったことも相まって、ネフェリンなどを特徴的に含むアルカリ岩が生成されたものと考えられる。
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