研究概要 |
平成6年度に続いて本年度も隕石試料の分析を順調に行なうことができた。実験は、(i)主として南極隕石全岩試料について微量親鉄元素の放射化学的中性子放射化分析による分析,(ii)全岩試料から金属成分を分離し、その化学組成の機器中性子放射化分析による分析,の2つについて行なった。分析はならべく多くのコンドライト隕石について結果が得られるよう系統的に実施した。これらの結果に基づいて,C1コンドライトの元素組成について考案した。その結果、現在用いられているCIコンドライトの親元素存在度のうち,特にレニウム(R)の値は他のコンドライト隕石の値に比べて系統的に小さく,従って太陽系存在度としては不適当な値であると判断された。これらの実験のほか,誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)法による微量希土類元素,ウラン,トリウムの全岩分析も行なった。その結果,従来あまり文献値が多くなかった単核種元素(プラセオジム,テルビウム,ホルミウム,ツリウム)について信頼性の高い分析データが得られた。これらの結果を考察したところ,この4元素のうち,少なくとも重い方の3つの元素の太陽系存在度がやや高すぎることが指摘された。これらの結果についてはそれぞれ論文を作成し,すでに公表した。それ以外の結果についても論文としてまとまっており,3編の論文が投稿中で査説を受けている。総じて,最終年度は実り多い年であり,本研究成果は受けた補助金に十分みあうものであると考えられる。
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