研究概要 |
各年度を通じて研究計画はバイプレンマー類1,ロフィンペルオキシド類2及びシクロブタ[b]ピロール類3の合成(木村,佐竹,岡本),液層と固相の示差熱分析計による熱力学パラメターの収集(木村,佐竹,岡本),液層と固相の化学発光の測定(木村,岡本)は予定通り完了した.これら1-4の反応系は熱的に禁制な反応形式を持つもので溶液では研究されているが固相では研究例のないものである.1の固体状態での逆[4π+4π]型光付加反応のルートは二つあり,一つは発光には至らない溶液中のものと同じもので,もう一つは150℃以上で生成物からの発光をもたらすもので有ることを明らかにした.化学発光を伴う反応過程の機構は今回示差熱分析の手法を使って,どうにかその熱力学的なパラメターを決めることに成功した.化学発光をともなう過程のΔSは比較的大きく,イオン解裂もしくはラジカル的な解裂過程を示唆する新しい分解過程の存在を確認した.このようにバイプレンマーはadiabatic(断熱的)およびdiabatic(非断熱的)なエネルギー面上に拡がるさまざまな状態に超高速(30ピコ秒)で移り,様々な反応を見せる興味深い反応系である.化学発光系として有名なロフィン類2の固体における化学発光を行い,発光と分解反応の熱力学データーを収集し,本質には液層での反応と同じであることを明らかにしたので将来報告する予定である.3からアゼピン類への異性化に伴う発熱ピークに着目し,小沢法による速度論的解析を行った.この結果とNMR法にに因るものと比較し同様の結果を与えることを確認した.さらに熱的には禁制なジアザビシクロ[3.2.1]オクタジエンのジアザペンタレンへの固体での熱力学パラメターも集め,熱的には禁制な[4+4]の反応と比較して,反応形式からの検討も加えたい.ここに熱的に禁制な反応形式が溶液,固体状態でどう変わるかが明らかにし,さらに発展させる基盤を得た.
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