研究概要 |
母結晶の次元性、特に層状構造に着目して二重Ta‐O層で隔てられた(La,Ta)‐O層からなるLaTa_7O_<19>を母結晶に選び、高輝度の青色、緑色および赤色蛍光体の材料開発の基礎的研究を行った。 1.出発原料としてLa_2O_3,Tm_2O_3,Tb_4O_7,Eu_2O_3とTa_2O_5(純度99.9%以上)を用い、(La_<1-x>R_x)Ta_7O_<19>(R=Tm,Tb,Eu)の組成式に秤量後12MHNO_3で溶解・蒸発乾固する硝酸塩共分解法により原料を調整し、空気中1200℃で24時間焼成して六方晶系の単一相固溶体を合成することに成功した。格子定数の組成依存性より、Tm^<3+>,Tb^<3+>とEu^<3+>はLa^<3+>サイトを仕込み組成通り完全固溶したことが判明した。 2.(La_<1-x>R_x)Ta_7O_<19>(R=Tm^<3+>,Tb^<3+>,Eu^<3+>)固溶体において、Tm^<3+>では460nm付近の青色発光、Tb^<3+>では547nm付近の緑色発光、Eu^<3+>では610nm付近の赤色発光がシャープな発光スペクトルとして観測できた。発光強度の組成依存性の結果より、最大発光強度となるXの値は、Tm^<3+>ではX=0.2,Tb^<3+>ではX=0.8,Eu^<3+>では濃度消光は起こらず、X=1.0のEuTa_7O_<19>試料が最も強い発光強度を有していることが判明した。三次元的結晶構造であるYAIO_3にTm^<3+>,Tb^<3+>,Eu^<3+>を付活した試料の最大発光強度となる組成はX=0.02〜0.04である結果と比較すると、本研究で得られた希土類固溶発光体は高濃度型高輝度発光体であることが判明した。 3.本研究で得られた希土類固溶体の発光減衰特性を評価した結果、発光減衰曲線は擬二次元的エネルギー回遊の式で解析できることが判明し、LaTa_7O_<19>母結晶の二次元層状構造を反映した優れた高濃度型高輝度発光体材料であることがわかった。本研究で得られた成果を基にして、電子線などの励起エネルギーを効率よく吸収し、発光中心となる希土類イオンなどにできるだけ速やかにエネルギー伝達できる機構をもつ新しい形の高輝度発光体の開発に関する基礎的研究成果が得られた。
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