研究概要 |
各種ガスセンサーや燃料電池などへの応用が期待される超イオン導電体におけるイオン伝導機構の本質的な理解を目的として、イオン伝導を支配する欠陥構造と低温物性の相関関係に着目して、主として熱力学的立場から研究を行い、多大の知見を得ることができた。 まず精密熱容量測定をはじめ、インピーダンス測定や中性子構造解析を既に行ってきたAgCrS_2,CuCrS_2,NaCrS_2,Pb_4Cu_<16>I_7Cl_<13>,Ag_8GeTe_6,Cu_8GeTe_6,Cu_3BiS_3,PbSnF_4などについて詳細な解析を進めるとともに、ヘリウム3クライオスタットを用いた極低温用小型熱量の設計ならびに製作を行った。その結果0.5Kに至る極低温領域での動作を確認し、空セル熱容量、シリコンオイルの熱容量測定を完了し、さらにYSZ焼結体試料の熱容量測定を行い、詳細な解析を進めている。 Y_2O_3の含有量を0〜14モル%の範囲で変えたYSZの粉末および焼結体試料については、ICP分析をはじてとするキャラクタリゼーションを行い、X線回折、ラマン散乱などにより構造と格子振動に関する情報を得て、さらに低温熱容量測定を行った。その結果Y_2O_3の含有の増加とともに化学式量単位のモル熱容量は増加するが、原子数単位に変換すると高温領域では結晶格子が柔らかくなることによる効果を示して熱容量は単調増加するが、極低温領域では低励起モードを反映して8モル%で極大となることがわかり、欠陥構造とその規則性の格子振動への寄与を明らかにすることができた。また粉末試料と焼結体試料との相違についても表面吸着効果等の解析を行った。 これらの研究成果は、第9回固体イオニクス国際会議をはじめ、日本化学会、日本物理学会、固体イオニクス討論会、熱測定討論会などで口頭発表するとともに、既に7編の論文としても発表し、さらに投稿準備中である。
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