研究概要 |
完成度の高い緻密質セラミックスの高温での力学的挙動,特に遅れ破壊(SCG型疲労破壊)とクリープ変形・破壊に関する研究を行なった.耐クリープ性のある高温構造材料ムライトで,温度,応力に応じてSCG型からキャビテーション型への機構の変化が認められ,材料の信頼性評価や寿命予測のための基礎的知見が得られた(発表予定).他の構造材料セラミックス(アルミナ,マグネシア,ジルコニア及びそれらの複合体)についても,疲労,遅れ破壊,クリープなどの研究を行なっており,一部の結果を発表しているが,今後さらに発展させるべきテーマでもある.比較的低応力下ではSCG型疲労破壊より,変形とクリープ破壊が重要となる.これに関しては,ジルコニア(Y-TZP)の超塑性と微粒アルミナの動的粒成長による歪み硬化という対照的な現象が注目され,両者における粒界の安定性との関連が指摘てきた.すなわち,ジルコニア(Y-TZP)では高温変形は不均一であり,多分粒界近傍の物質移動(主に拡散)のみに支配され,粒界の安定性を反映して粒成長は生じにくい.一方,微粒アルミナでは拡散流動(Cobleクリープ)ではあるが,サブミクロンという微粒であるため粒界における界面反応が変形を支配しており,さらに変形にともなう動的粒成長が生じる.また,この粒成長に伴う硬化のため粒界キャビティの発生が認められるようになる.この結果も一部発表済みであるが,詳細は発表準備中である.非酸化物についても,粒界の関与するSCG,クリープ変形・破壊,擬弾性などの諸現象の研究を,他の研究者の協力も得て実施しており,その結果も既に発表予定となっている.以上の研究結果に基づけば,高温での破壊と変形において粒界の果たす役割は予想以上に大きく,粒子自体の物性よりむしろ粒界がこれら材料の高温力学物性を支配していると言っても過言ではない.
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