研究概要 |
本研究を通して,4位に置換基をもつホモキラルな2,2-ジ置換オキサゾリンが,次の点で優れた不斉補助基として働くことが明らかとなった.すなわち,1.この不性補助基は入手容易な光学活性α-アミノ酸から短段階(2段階)の反応で収率良く合成できる,2.そのN-アミド誘導体におけるアミド結合は,2位置換基とアミド置換基との立方相互作用によりZ-異性体が安定配座となる,3.^1HNMRスペクトルによる検討から,N-不飽和アミド誘導体はZ/s-cis異性体が最も有利な安定配座である。4.不飽和アミド誘導体とニトリルオキシドとの1,3-双極性環状付加反応は最高100%deの選択性で進行する,5.不飽和アミド誘導体とニトロナ-トとの反応のジアステレオ面選択性も高い,6.塩化トリメチルシリル存在下での不飽和アミド誘導体に対するキュプラートの共役付加反応も最高100%deの選択性で進行する。7.これらの反応における生成物の主ジアステレオマ-は,オキサゾリジンのN-不飽和アミド誘導体のZ/s-cis配座における4位遮蔽置換基の反対のジアステレオ面での反応生成物である,8.プロパンアミド誘導体から生成するZ-エノラートとハロゲン化アルキルとのアルキル化反応は,高いジアステレオ面選択性で進行する,9.このZ-エノラートとα,β-不飽和カルボニル化合物とのMichael付加反応はアンチ選択的で,ほぼ完全なジアステレオ面制御を達成できる,10.これに対して,オキサゾリジンのN-不飽和アミドをアクセプターとして用いるMichael付加反応のジアステレオ面選択性は低い,11.この不斉補助基は不斉アルドール反応にも有効である,12.結局,オキサゾリジン不斉補助基は求核反応剤(α,β-不飽和アミドとして)のみならず求電子反応剤(リチウムエノラートとして)に導入して用いても,高効率的キラリティー制御が行える優れた不性補助基である。
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