研究概要 |
初年度の研究として,静的加圧による融剤法で合成された人工ダイヤモンド中の不純物の除去を目的として浮選法の適用について検討した。まず,実操業工程中から採取した人工ダイヤモンドとセラミックスれんがの粉末混合試料を用いてケロシンを捕収剤としてpH4以下,ケロシン添加濃度50〜80mg/l,パルプ濃度4%以上の最適条件下において,ダイヤモンド実収率87%,同品位96%が得られた。また,ダイヤモンドと未反応グラファイトの浮選分離の可能性について検討したところ,シクロヘキサンあるいはn-デカンなどの比較的極性の低い捕収剤を用いて,最適添加濃度(40mg/l)および最適pH(pH11)を選定することにより,グラファイトを浮鉱中に回収可能であることを指摘した。更に,ダイヤモンドとグラファイトの混合試料を用い,上述の結果を基に浮選分離試験を行った結果,試薬の選定,同試薬の添加量,パルプpHを適正に制御することによりグラファイトを浮鉱中に回収し得ることを確認し,本目的に浮選法の適用の可能性を明らかにした。次年度には,初年度で得られた結果を基に,人工ダイヤモンド中の未反応グラファイトを高度に除去することを目的とし,捕収剤としてエロフロートあるいはケロシンを用いた場合の両者単独試料の浮遊性に及ぼす各種抑制剤の効果について検討した。ケイ酸あるいはリン酸化合物によりダイヤモンド浮遊率は著しくて低下するが,グラファイト浮遊率はこれら抑制剤の添加によっても高浮遊率のままであった。以上の結果より,上記化合物の加水分解反応生成物がダイヤモンド表面に吸着し同表面を親水性化していることを考察した。また,上記結果を基に両者の混合試料を対象とした浮遊選別法による優先分離試験を行い,適切な抑制剤,起泡剤,捕収剤,パルプpHを選定することにより,ダイヤモンド品位97%の沈降産物が同回収率96%で回収可能なことが確かめられた。
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