研究課題/領域番号 |
05453155
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研究種目 |
一般研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
植物栄養学・土壌学
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
但野 利秋 北海道大学, 農学部, 教授 (40001440)
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研究期間 (年度) |
1993 – 1994
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研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
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配分額 *注記 |
5,800千円 (直接経費: 5,800千円)
1994年度: 1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
1993年度: 4,000千円 (直接経費: 4,000千円)
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キーワード | 酸性フォスファターゼ / 分泌 / ル-ピン / 根圏 / 有機態リン酸化合物 / 難溶性無機態リン酸化合物 / リン酸のリサイクル利用 / リン資源 / 分泌性酸性フォスファターゼ / 酸性フォスファターゼの分泌部位 / 分泌性酸性フォスファターゼの合成部位 / 燐欠乏 / 分泌性酸性フォスファターゼの種間差異 / 低燐耐性 / ルーピン / 分泌性酸性フォスファターゼの性質 / 燐資源の効率的循環利用法 / 土壌の有機態燐の分解・利用 |
研究概要 |
(1)農耕地および野草地に生育する16種の植物の根圏と非根圏における酸性フォスファターゼ活性を調査した。根圏における活性は非根圏のそれより1.1-26.8倍高かった。(2)ル-ピン、トマト、アズキを供試して土耕実験を実施した結果、これらの作物の根から分泌される酸性フォスファターゼは、根圏土壌に含有される有機態リン酸化合物を加水分解にて無機態リン酸を放出し、リン酸吸収を増加させる機能を持つと推定された。(3)ル-ピンの根から分泌される酸性フォスファターゼは、トウモロコシ葉の乾燥粉末および都市汚泥に含有される有機態リン酸化合物から無機態リン酸を放出する機能を発現した。(4)ル-ピンの根より分泌された酸性フォスファターゼ粗酵素液を、リン酸質肥料無添加条件で低リン耐性が低いテンサイとトマトの根圏に定期的に注入することにより、これらの両作物によるリン吸収が増加し、生育を改善された。この結果は、分泌性酸性フォスファターゼが植物根によるリン吸収において大きな役割を果たしいることを示す。(5)分泌性酸性フォスファターゼは根の全域から分泌されることを明らかにした。この酵素は主に根の表皮細胞で合成され、ただちに分泌されると推定された。分泌性酸性フォスファターゼの合成と分泌は培地からのリン酸供給が少なく、植物がリン不足を感知した場合に誘導され、リン欠乏条件で合成と分泌が急激に高まった。(6)ル-ピンとトマトの根から分泌される酸性フォスファターゼの分子量はやや異なるが、その特性はかなり類似することを明らかにした。但し、分泌量はル-ピンでトマトより著しく多かった。(7)ル-ピンの根から分泌された酸性フォスファターゼは根表面より2.5mm以内の根圏に局在し、活性は根表面に近いほど高かった。根圏において酸性フォスファターゼ活性が高いほど根圏土壌中の有機態リン酸化合物含有率は低下した。(8)ル-ピンの根から酸性フォスファターゼとともにクエン酸、リンゴ酸、シュウ酸が分泌された。根圏におけるこれらの有機酸の分布は酸性フォスファターゼの分布と類似した。これらの有機酸は、難溶性無機態リン酸化合物からリン酸を放出する機能を持つことを示した。(9)世界的にリン資源の埋蔵量の寿命は数10年程度であると推定されているが、リン酸を効率的にリサイクル利用するならばその年数を数十倍にすることが可能である。本研究の結果から、植物根の酸性フォスファターゼ分泌能は、リン酸の効率的リサイクル利用法の開発において中心的役割を果たし得ると結論される。
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