| 研究概要 |
南西諸島の赤黄色土壌群および東北地方の火山灰土へのアジア大陸起源広域風成塵の影響について研究し,南西諸島と東北地方における風成塵の堆積速度,堆積時期,堆積環境の比較を行った.その結果,アジア大陸内陸部の乾燥地から長距離輸送されるレス質広域風成塵がわが国の土壌,大気水圏環境に対して著しい影響を及ぼしていることが明らかとなった.主な結果は以下の通りである.
1.土壌中の微細石英の酸素同位体比より,南西諸島の赤黄色土壌群母材がアジア大陸のレス,レス質土壌および最終氷期に陸化した東シナ海堆積物の影響を強く受けていることを明らかにした.
2.種子島の赤黄色土と火山灰土の累積土壌について研究し,年代既知の火山灰層を利用して南西諸島における最終氷期の広域風成塵堆積速度が約6cm/1,000年と推定した.
3.岩手山麓の累積テフラ層の物理的,化学的性質,粘土鉱物学的特性より,テフラ層中に広域風成塵が約1〜1.5mの厚さで堆積していること,東北地方へのアジア大陸起源広域風成塵の堆積は,2〜3万年前,5〜7万年前の寒冷期に顕著で,堆積速度は約4cm/1,000年であることを明らかにした.広域風成塵層の堆積状況から岩手山麓における古環境を推定した.
4.東アジア地域における酸性雨の水質に及ぼす広域風成塵の影響:日本や中国の東北地方では広域風成塵中のカルサイトによる酸性雨の部分的な中和が起こることを明らかにした.
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