研究課題/領域番号 |
05453167
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研究種目 |
一般研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
生物生産化学・応用有機化学
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小田 順一 京都大学, 化学研究所, 教授 (50027041)
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研究分担者 |
加藤 博章 京都大学, 化学研究所, 助手 (90204487)
平竹 潤 京都大学, 化学研究所, 助手 (80199075)
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研究期間 (年度) |
1993 – 1994
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研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
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配分額 *注記 |
6,700千円 (直接経費: 6,700千円)
1994年度: 1,900千円 (直接経費: 1,900千円)
1993年度: 4,800千円 (直接経費: 4,800千円)
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キーワード | 抗体触媒 / Pseudomonas属リパーゼ / エステル加水分解 / 遺伝子クローニング / シャペロン様タンパク質 / 分子モデリング / 活性アルギニン残基 / 可変領域 / 生成物阻害 / 触媒性残基 / 巻き戻しタンパク質 / リパーゼ活性化 |
研究概要 |
本研究は、エステル加水分解という共通の機能を持った2種の特異な触媒性タンパク質、「リパーゼ」と「抗体触媒」について、その触媒メカニズムを明らかにし高度機能改変を行なうことを目的として行なった研究である。まず、Pseudomonas属由来のリパーゼをコードする遺伝子を単離し、高発現プロモーターに接続することによって、大腸菌でリパーゼを大量に発現させる系を確立した。しかし、生産されたリパーゼはペプチド鎖が正しく折り畳まれず、不活性な封入体を形成した。一方、リパーゼ遺伝子のすぐ下流にある未知のタンパク質をコードする遺伝子を見い出し、同じく大腸菌で大量発現させ、その遺伝子産物を単離することに成功した。この遺伝子産物は、in vitroで先ほどの不活性なリパーゼを正しく巻戻し、活性型のリパーゼに変えるシャペロン様の働きがあることを明らかにした。一方、エステル加水分解の遷移状態アナログとなるリン酸エステルを抗原としてモノクローナル抗体を誘導し、アルキルエステルを加水分解する抗体触媒を得た。この抗体は、効率よくしかも非常に高い立体選択性でエステルを加水分解する活性を有していたが、著しい生成物阻害を受け、反応は数回のターンオーバーののちほぼ停止してしまった。この抗体の触媒機構を明らかにするために、抗体タンパ質の化学修飾を試みたところ、1個のアルギニン残基が反応に必須であることがわかった。そこで、抗体の結合部位をコードしている遺伝子をクローニングし、アミノ酸配列を明らかにしたところ、重鎖の第3超可変領域(CDR3)にアルギニン残基が1つ存在していることが判明した。このアルギニン残基は、また、生成物との静電的相互作用により強力な生成物阻害を引き起こす原因ともなっていることを、炭酸エステルを基質として用いることによって証明した。すなわち、反応後、脱炭酸により中性の生成物を生じる炭酸エステルでは、予想通り、生成物阻害はほとんど見られず、100回以上のターンオーバーが観測された。以上のように、エステル加水分解という共通の機能を持った2つの触媒性タンパク質、リパーゼと抗体触媒について、分子シャペロン様活性化、活性残基と反応機構という観点から詳細な反応機構論を展開することができた。
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