研究概要 |
乳酸菌が衆病皆除の作用に優れているとする歴史的経験則から,乳酸菌のヒト健康維持に対する研究が進められ,筆者らもこれまでに「発酵乳の抗変異原性」を研究課題に中心にして種々検討を重ねてきた。しかし,N-ニトロソ化合物の示す強い発癌性に対する乳酸菌の消去作用について,抗変異原性の有無の観点から深化させた研究は現在のところ身当たらない。本研究は消化器癌予防の上からも,また高機能性食品開発の上からも重要と考え,科学研究費の配分を戴いたことを機に実施した。 平成5年度において、世界各地から集めた種々の発酵乳から分離同定した多株の乳酸菌について,先ずアミノ酸の加熱分解物であるTrp-P1およびTrp-P2の乳酸菌菌体に対する吸着作用と,その作用機序の解明に努め,インドネシア原産のダディヒやモンゴル原産のケフィアから分離した乳酸菌の中に,Trp-P1とTrp-P2を強く吸着させる株のあることを認めた。次いで,それらの株についてN-ニトロソ化合物に対する消去作用の有無を調べた。その結果,Leuconostoc属の菌種に強い抗変異原性を認めた。 平成6年度では前年度の試験で明らかとなった揮発性のN-ニトロソアミンに対して顕著な抗変異原性をもつLeuconostoc ParmesenteroidesやStreptococcus lactis subsp.diacetylactisなど40株を選択し,これらの上記物質に対するる抗変異原性について発酵乳を製造して試験した。その結果.供試の総ての菌株がN-ニトロソジメチルアミンとN-ニトロソジエチルアミンに対し抗変異原性があることを認めた。
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