研究概要 |
現在,がん治療薬の研究は国内外で広く行なわれており,本研究に関連する抗発がんプロモーター物質の探索もがん予防の面から注目され活発に研究が進められている.しかし,これまでに報告されている抗発がんプロモーター物質に共通する骨格はまだ発見されておらず,またこれら化合物が,どのような機構で活性を示すかも明らかにされていない.現段階ではさらに数多くの化合物の探索が必要であると考えられる.本研究では,このような観点から天然物より抗発がんプロモーター物質の単離と,その作用機構の解明を目的に研究を開始した. ニシキギ科クロズル,マユミの成分探索を進め,約50種の新規セスキテルペンエステルを単離し,その構造を決定した.これらについてインビトロにおけるEpstein-Barrウイルス活性化抑制作用を検討した結果,いくつかの化合物は低毒性で活性を示すことを発見した. 活性の強かった化合物triptogelinA-1についてマウス皮膚二段階発がん抑制試験を検討した結果,有効であることが明らかになった.さらにこのものについて経口投与によるマウス肺二段階発がん抑制試験を検討した結果,コントロールに比べ有意に発がんを抑制することを発見した. クロズル,マユミより単離したセスキテルペンの抗ウイルス作用を検討した結果,triptogelinC-2に強い活性を認め,その作用機構についても明らかにした. さらに,ニシキギ科オオツルウメモドキの成分について検討し,新規セスキテルペン8種を単離しその構造を明らかにした.また,パプア・ニューギニア産ニシキギ科植物の成分研究も進め,特異な構造を有するスチルベン誘導体の構造を明らかにした. 以上のように,本研究は科学研究費の補助金を受けて,成果を上げることができた.
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