研究概要 |
本研究では,岡田が石灰質ナノ化石群集を解析し,オーストラリア側で行う有孔虫群集の解析結果と併せて,インド洋と西太平洋における第四紀の古環境復元をめざした.西太平洋からのコアは入手済みであるが,時間的な制約もあり,実際の研究を行ったのは東部インド洋からの3本のコアと,南大洋北部(オーストラリア南東岸沖)のピストンコアの計4本である.東部インド洋については熱帯から冷温帯域までの異なる海域を研究したことにより,第四紀後期の氷期-間氷期サイクルに伴う古環境復元をある程度解明できた.特に,熱帯インド洋のODP Hole716Bのコアを分析したことから,インド洋のモンスーンはミランコビッチサイクルに対応した10万周期で変動しており,氷期には弱まったことが,Florisphaera profundaの相対頻度低下により判明した.また,下部透光帯の優先種3種は同調した層準変化を示すことから,通常の深海コアに保存される唯一の種であるF.profundaの挙動は,下部透光帯の古環境変化を正確に反映していることが分かった.温帯域からの2本のコアの群集解析からは,オーストラリア西岸沖を南下するル-エン海流の影響が氷期に弱くなり,西オーストラリア海流の影響が強化されることを明らかにした.また,熱帯海域においては透光帯の成層構造の安定度指数となるF.profundaの相対頻度は,水温の低い温帯域では下部透光帯の水温低下に強く反応することも分かった.インド洋と西太平洋の結合点である南大洋北部のコアからは,間氷期にはル-エン海流の影響がタスマニア島北西海域まで及んでいるが,氷期には熱帯性の要素が完全に消滅し,周南極深層水が卓越したことを明らかにした.以上の研究結果は3つの論文にまとめて国際学術誌に投稿し,いずれも掲載が確約されている.
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