研究概要 |
1)トカラ列島を中心に分布するマルバサツキに関しては,現地から約800系統を採集し,理学部圃場で比較栽培をし,葉形を中心にした形質解析を行い,現地集団での葉形変異との比較検討を行った。解析はスキャナーEpson GT6500によって葉形情報を画像としてMacintosh Quadra 800AVに取り込み,計測解析を行った。現地集団における標高や生育環境に対応した葉形の適応的変異が,栽培環境下でも保持され,一定の生態分化がマルバサツキでは進行していることが明らかになった。 2)トカラアジサイと近縁のヤクシマアジサイについては,約200系統が採集され,系統保存が進められているが,形質解析は残された問題となっいる。 3)現地調査の中で,木本性になるボタンボウフウ(セリ科)がトカラ列島域から発見された。また,スミレの中で特異的に枝打ち型の花序を形成する集団も発見され,それらについての系統の収集(ボタンボウフウは約600個体,スミレは約200系統)と形質解析が進められた。両者ともに,この地域で新しく分化しつつある集団と推定される。 4)固有種のトカラカンアオイと奄美・徳之島・黒島・屋久島などの近縁カンアオイ類の系統収集が進み,この特異なカンアオイの分化の過程の検討が行われつつある。 5)サツマノギクのトカラ型集団(葉の裏の毛がオオシマノジギク型であるが,染色体数はサツマノギクと同じ2n=72の8倍体)の核型の調査が,カラービデオ-Macintoshシステムの画像解析装置を利用して進められた。
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