研究概要 |
定位反応については,オオムギの重力に正常に反応しない突然変異系統を用いて解析した結果,このオオムギの芽生えは,本葉葉鞘が重力屈性を発現するステージには本葉葉鞘が重力屈性能を持たないため,重力屈性を示さなくなることが明となった。また,植物体を垂直方向に上下を逆さにして重力刺激を与えると,正常種では対照区に比べて草丈が小さくなるのに対し,重力屈性異常系統では主に葉身の伸長促進によって草丈が長くなることが,イネに続いてオオムギでも確認され屈性以外の重力反応の存在を示唆する結果が得られた。また,重力屈性異常系統の示す分げつの散開した草型は,同一遺伝子によって発現することが,雑種第2代を用いた解析より明かとなった。水分因子については,根の水分屈性におけるカルシウムイオンの役割について,重力屈性能を失ったエンドウの突然変異特性を使ったモデル系を用いて研究した。エンドウの重力突然変異系統の根冠部にソルビトール寒天片を処理すると,根において正の水分屈性が誘導されるが,この水分屈性はカルシウムキレート剤のEGTA前処理によって阻害され,EGTA溶液をカルシウム溶液に置き換えると屈曲を回復した。さらに,カルシウムチャンネル阻害剤の塩化ランタン前処理は水分屈性を阻害した。一方,カルシウムイオノフォアは水分屈性を促進したことから,細胞外の遊離カルシウムイオンの細胞内流入が水分屈性を増大させることが示唆された。これらの結果から,根冠におけるカルシウムが刺激感受部位における情報伝達の過程で機能していることが示唆され,そのカルシウムの働きは根冠の細胞膜を介しているものと考えられた。
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