| 研究概要 |
植物における栄養獲得・物質分配システムのタイナミクスを明らかにする目的で,研究を行った。とくに,光合成同化炭素ならびに窒素の動態を,炭素.窒素安定同位体を用いて定量的に解析しようとし,以下の点が明らかとなった。
1.物質分配システム;(1)水稲根への光合成同化炭素の分配特性からみた窒素欠乏に対する反応が,生育段階によってまた根の節位によって異なることが示された。(2)生殖生長期間を通じて,窒素欠乏処理により,呼吸基質としての新規固定炭素依存割合が高まる。(3)水稲では幼穂形成期〜出穂期において上位根が光合成同化産物のシンクとして活発に機能しており,上位根での呼吸における新規固定炭素の利用が窒素栄養によって大きく左右される。(4)遮光処理による短期間の光合成量の低下によって,水稲における光合成同化産物の分配が大きく変化することが定量的に示された。ソース器官からの新規固定炭素の供給減少を契機として,根においては新規の発生の低下による新たなシンク形成を抑制するいっぽう,すでに存在する古根への同化産物の供給を優先する体制を形成する。以上のように,光合成同化産物の分配と利用は,生育段階,窒素栄養ならびに光環境の変化に動的に応答し変化することが定量的に示された。2.栄養獲得システム;(1)アルファルファ幼植物における窒素吸収は,硝酸態よりもアンモニア態で活発であり,それは根系の発達形態の違いと関連していた。(2)非マメ科植物であるヤシャブシ林における窒素固定能を^<15>N法で調査した結果,ヘクタール当たり年間55-58kgと推定される。以上のように,植物における窒素獲得戦略の多様性の一端が定量的に示された。
|
