研究概要 |
5年度から7年度までの3年間にわたり,ランの栄養成長に対する多量要素の適正濃度や,開花に対する多量要素の役割について主としてファレノプシスを供試し検討を行った. 窒素については,ファレノプシスでのこれまでの調査で適当と考えられた濃度の培養液を週1回施与し,硝酸態窒素とアンモニア態窒素の比率の影響を調べた.その結果,成株,幼苗いずれにおいても9:1,10:0での成長は著しく劣った.最適比率は,成株では花茎の発生も含め考えると8:2であり,幼苗では7:3であることを明らかにした.また重窒素を用い,窒素の転流は花茎伸長期から開花までは各部位から花茎へが顕著であり,開花後はそれが花,根へ分配されることを認めた. リンについては,種々の培地において施肥適正濃度は80〜100mg/lであった.適正な成育のための体内リン濃度は0.3%で,地下部はそれより高かった.花茎発生時の10月にはそれまでの成育期より体内リン濃度は高くなった. カリについては,培地の違いにより最適濃度が異なるが,スギバ-ク培地においては,120〜160mg/lと考えられた. 各要素の適正濃度を組み合わせた標準培養液を用いた栽培実験において,適正な施肥濃度と頻度は,成株では1倍液を週1回,幼苗では2/3倍液を同じく週1回であることを明らかにした. シンビジウムにおいては,花茎数は300mgN/lで有意に増加したが,葉身長は220mgN/lの方が優れていた.鉢物シンビでは葉とのバランスも重要なので300mg/lよりやや少ない位が適正濃度と考えられた.また慣行栽培では,過剰施肥,過度の灌水に起因する根腐れによる成育不良が発生していることが示唆され,それについても考察を加えた.
|