研究概要 |
ナマズClarias batrachusの皮膚粘液中のレクチン活性はAeromonas hydrophylaへの感染で著しく上昇した。免疫魚では感染が成立せず,レクチン価の上昇も認められない。凝集したウサギ血球をウサギに接種して得た抗体を使ってウェスタンブロッティングを行ったところ,レクチンは比較的低分子の複数の分子からなることが分かった。皮膚のレクチンと共通の抗原性をもつレクチンは卵にも存在した。 皮膚,卵のレクチンの精製を試みたがいずれも失活が著しく精製にいたらなかった。 ビブリオワクチンの腹腔内接種により,ナマズの血中抗体価上昇が見られたが,皮膚粘液中の抗体価は変化せず,皮膚に存在する免疫グロブリンは,体内のものとは独立した免疫系に属すものであることが示唆された。一方,産卵期に水カビ症が多発するニジマスでは,産卵期以前の血中免疫グロブリンレベルが水カビ症罹患魚で非罹患魚に比べ有意に高く,皮膚の防禦系と体内の防禦系とが密接な関係にあることが示された。 ウサギ赤血球とナマズ体表粘液とを混合して得られたレクチン処理赤血球に対するナマズ好中球の貧食活性,リンパ球のロゼット形成能を調べたが,いずれも反応が見られず,白血球のレクチンリセプターは確認できなかった。実験系に問題があり,精製レクチンによる処理が必須であるものと考えられる。また,レクチン処理赤血球そのものを蛍光標識抗レクチン抗体で染色し,共焦点レーザースキャン顕微鏡で観察したところ,赤血球凝集塊の周りに付着している繊維状の物質が染っていることから,凝集反応にはレクチンのみではなく,他の物質も関与していることが明らかとなり,そうした面からの検討も必要と思われる。
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