研究概要 |
本研究は、海域実験と室内実験とに分けて行われた.海域実験としては, 1)人工衛生を利用した回避経路の測定,2)記録標識による産卵期間中の摂餌生態,3)潜水行動の解析,4)記録標識を用いた日本列島の主要産卵場における砂中温度の同時測定,5)来遊頭数の年別比較が試みられた.室内実験では,6)砂中温度変化にともなう孵化仔ガメ雌雄比,7)砂中温度と仔ガメ孵化率との関係調査が行われたが,これらの中には一部海域実験の結果が取り込まれた.以下に各実験項目ごとに実績を報告する. 1)人工衛生アルゴスシステムを用いて,2頭にPTTを装着した.受信さた位置情報は,7点でありすべてが産卵場沖合いからであった.このことから見て,2個体は広範囲な回遊は行っていなかったことが判明した. 2)胃内に挿入した温度記録標識により,産卵期アカウミガメの摂餌の有無について15個体測定した結果,摂餌はしていないことが判明した. 3)潜水記録には、極力エネルギーを節約するように,一定の水深のみが記録され,呼吸時以外は静止していることを示唆した.しかし,環境水温が低い時には,表層回遊に切り替わることが,深度と水温記録から判明した. 4)来遊頭数は5年間減少し続けた.全国の砂中温度環境は集計整理中である. 5)卵の孵化では,発育段階23から26の期間に経験する温度によって,雌雄が決定されることが判明した.これは,この期間に分泌されるホルモン量が温度に依存することによると思われ,現在新しい研究を計画中である. 6)実測された砂中温度により,実際の砂浜での雌雄比の時間変化を計算した.6月中旬以前と8月中旬以後の産卵個体は雄となることが判明した. 7)孵化率は砂中温度に関係なく,70%で積算温度一定の法則が見いだされた.
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