研究概要 |
ネコ染色体上の脆弱部位について,FdU,カフェイン及びアフィディコリンによってネコ正常線維芽細胞を処理し検討した.その結果,5つのアフィディコリン感受性部位をネコ染色体A1p,A2q,C2q,D3q,D4p上で検出した.FdU感受性部位は,E1p及びF1qの2カ所を検出した.これらの結果より,ネコ染色体上の脆弱部位は,ヒトの染色体と比較して非常に少ないことが示唆された.次に,ネコの癌遺伝子をマッピングするために,正常ネコ肝臓ゲノムDNAを用いて,EMBL3ゲノムライブラリーを作製した.DNAプローブは,ネコプロヒビチンcDNAの一部をRT-PCR法で増幅し,プラスミドベクターpBluescript II KS(+)にクローニングしたものを用いた.その結果,ネコプロヒビチン遺伝子は,蛍光in situ hybridization法によって染色体B4qにマッピングされた.また,クローニングされたネコプロヒビチンcDNAの一部の塩基配列を決定し,ウシ,ウマ,ウサギ及びイヌの肝臓より得られた各動物のプロヒビチンcDNA断片の配列と比較した.その結果,その配列は,調べた動物間で極めてよく保存されており,この領域がプロヒビチンタンパク質の機能に必須であることが示唆された. 腫瘍関連遺伝子の発現による腫瘍診断の可能性を検討するために,RT-PCR法によって,正常イヌ脾臓と同様,種々のイヌ腫瘍組織についてc-kit遺伝子の発現を検討した.その発現は,肥満細胞腫及び骨髄腫で検出されたが,乳腺腫瘍,リンパ腫,腎腫瘍では認められなかった.これらの結果より,腫瘍マーカーとして,プロヒビチン及びc-kitプローブの有用性が示唆された.
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