研究概要 |
リポ酸はグリシン開裂酵素計のH-proteinやピルビン酸脱水素酵素複合体などのacyltransferaseの補欠分子族として,それらの特定のリジン残基に結合している.ウシ肝ミトコンドリアからリポ酸をapoH-proteinに結合させる反応を触媒するリポ酸転移酵素(lipoyltransferase)を分離した.ウシ肝ミトコンドリア抽出液をhydroxylapatiteで分画すると,リポ酸転移酵素活性は2世分に分画される.低塩濃度で溶出されるものをlipoyltransferase I,より高塩濃度で溶出されるものをlipoyltransferase IIと名付けた.LipoyltransferaseIIは単一の蛋白質として精製されたが,lipoyltransferase Iは完全には精製されなかった.両酵素とも類似の性質を示し,lipoyl-AMPとapoH-proteinを基質とし,リポ酸はATP存在下でも基質とはならなかった.分子量はゲル濾過,SDS-PAGE両測定方法で共に40,000であり,最適pHは7.9であった。反応はウシ血清アルブミンの添加により促進され,またリン酸を必要とする.Lipoyl-AMP及びapoH-proteinに対するK_m値は両酵素でほぼ等しく,V_<max>も類似の値を示した。両酵素はlipoyl-AMP以外にhexanoyl-AMP,octanoyl-AMP,decanoyl-AMPも基質とし,それぞれのアシル基をapoH-proteinに転移する反応を触媒した.予備的実験によれば,両酵素はH-proteinのみならずacyltransferaseのlipoyl domainにもリポ酸を転移するが,詳細は今後の検討に待たねばならない. Lipoyltransferase IとIIのN-末端アミノ酸配列と,lysylendopeptidase消化で得られたpeptideのアミノ酸配列を決定した.それを基にoligonucleotideを合成し,それをprobeとしてウシ肝cDNA libraryのscreeningを現在行なっている.
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