研究概要 |
1.単純ヘルペスウイルスのUS3遺伝子にコードされるプロテインキナーゼ(PK)は66Kの分子量と自己リン酸化能をもち、高濃度の塩に比較的耐性であった。また、acceptorとなるセリン、スレオニン残基のN末端側に数個のアルギニンを有する配列を好んで標的とした。 2.US3PKの示適条件下でIn vitroリン酸化反応を行い標的蛋白質の同定を試みた。分子量14K〜21K付近の蛋白質、及び76K蛋白質のリン酸化において野生株をUS3不活化ウイルスで著しい差が認められた。変異ウイルスやモノクローナル抗体を用いた解析から、前者はウイルス粒子に存在するUS9テグメント蛋白質、後者はUL12にコードされるアルカリヌクレアーゼであることが明らかになった。マクロファージにおける増殖には、後者のリン酸化が関与していると考えられるが、詳細な機構については今後の課題である。 3.US9,10,11,12の4つの遺伝子を欠く変量ウイルスの病原性について、マウスモデル系を用いて検討した。変異ウイルスは腹腔内接種では毒力において約20倍の低下をみせたが、脳内接種では有意の差はなかった。結果は、これらの遺伝子産物が中枢神経系での増殖、潜伏感染系の成立、維持に重要でないことを示唆した。 4.毒力の異なる各ウイルス株について、マクロファージ様細胞株RAWでの増殖性を検討した。1型と2型に分けて比較すると、調べた11株ではマウスに対する毒力をRAW細胞における増殖性には明らかな相関が認められた。
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