研究概要 |
試験管内での誘導造血や生体内での髄外造血に伴って、胸腺非依存性にユニークな形質(CD3^+4^-8^-)のT細胞亜群が生成する。これらT細胞は大半が,限定された構造の抗原レセプター(TCR),Vα4/Vβ2インバリアントTCR,を発現していることが判明した。一連の実験から,同インバリアントTCRが主要組織適合抗原(MHC)の発現を欠く胎生癌細胞(EC)を認識しうることが強く示唆されたので,ECのcDNAライブラリーから対応リガンドのクローニングを進めた。その結果,固リガンドの有力候補として4F2抗原を単離しえた。4F2抗原は、85kDaと40kDak 各々HおよびL鎖かる2量体で,胎生期細胞,癌細胞,活性化リンパ球などの増殖性細胞に強く発現さるが成獣諸組織では,脳と精巣以外には殆ど発現されないことから,胎生/増殖関連抗原と考えられた。興味深いことに,4F2抗原の発現パターンは諸種の点で,クラスIMHC抗原と逆相関を示すことがわかった。 4F2抗原が基本的に胎生期抗原であることに鑑みて,インバリアントTCRの発現状況の個体発生を,PCR法を用いて解析した。その結果,同インバリアントTCRmRNAは、4F2抗原と同様,胎生期(10日〜14日)の造血組織である肝臓において,ほぼ選択的に発現され胸腺組織の発達とそれに伴う通常のT細胞の生成に伴って,急速に消失していくことが明らかとなった。同mRNAは,ヌードマウスの肝においても認められることから、胸腺非依存性であることも確認された。 以上の結果から,造血組織において新たに生成されるユニークなインバリアントTRCを持つT細胞亜群は、胎生初期におけるT細胞の発生を反映するらしいこと,そのリガントは,胎生期の正常抗原である4F2が最も考えやすいことが示され,このセットが胎生期や成獣の誘導造血過程で、重要な制御機能を有しているらしいことが強く示唆された。
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