研究概要 |
最近の分子生物学的手法によりレニン・アンジオテンシン(R-A)系を構成する各要素は腎、副腎、性腺系に存在することが明らかになり、循環血中R-A系と独立して作動していると考えられている。現在、心血管系に局在するR-A系についても研究が進められているが産生経路、調節因子、生理的意義の詳細は不明である。本研究で我々は、血管壁がR-A系の最終活性物質であるアルドステロンを産生することを見いだした。先ず初年度ではラット腸間膜動脈かん流実験からアルドステロンがガスクロマトグラフィー質量分析器(GC-MS、Schimaz QP1000、既存)により検出されることを報告した(Hypertension誌 1995 in press)。最終年度ではアルドステロン合成酵素(P450aldo)の発現実験を行い、分子生物学的手法を用いて局所における産生を証明した。即ち、培養ヒト肺動脈由来内皮細胞および平滑筋細胞からPoly(A)+mRNAを抽出し調製液、primer,Reverse Transcriptase添加後42℃60分でインキュベート。99℃、5分間でsingle strand cDNAを得た後2.5unitのTaq DNA polymeraseで増幅した。RT-PCRによって得られるproductのサイズは322bpであり、1.5%agarose gelで電気泳動しナイロン膜に写した。膜はSSC、SDSで洗浄、オートラジオグラムにかけ、イメージアナライザーで解析した。一方、培養液中の産生ステロイドの微量分析はHPLC(ファルマシア、既存),GC-MSを用いて分析した。その結果、副腎外組織である血管壁においてアルドステロンが産生されることが確認され、その調節因子についても新たな知見が得られた(Hatakeyama et al.JBC269:24316,1994)。その産生量は副腎に比べて1:50と極めて少ないが、autocrine/paracrineとして血管局所において生理作用を発揮していると考えられた。特に、アルドステロンがアンジオテンシンIIの血管平滑筋肥大作用に対して促進的に作用するという今回の結果は、世界に先駆けた概念でありVascular aldosterone systemと命名された。
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