研究概要 |
1.動脈自家静脈移植術後の移植片、吻合部内膜肥厚の病態(犬) 末梢抵抗の高い異常血流の下で犬大腿動脈自家静脈バイパス移植を行い、移植片,吻合部内膜肥厚の病態を検索した。 (1)Brdu取り込み:移植後2週以内では移植片全層に変性を束しBrduの強い取り込みがみられ、線維芽細胞様細胞が多数浸潤した。移植3カ月以降では移植片、吻合部仮性内膜は肥厚し、その浅層は平滑筋細胞が配列してBrduの取り込みはないが、深層では筋線維芽細胞,線維芽細胞様細胞が常に認められBrduの強い取り込みが持続した。6カ月以後でも内膜肥厚は続き、細胞増殖の主座は仮性内膜深層にあると考えられた。 (2)コラーゲン,フイブロネクチンの分布:吻合部仮性内膜での、I,III,IV型コラーゲン,フイブロネクチンの分布は、正常血流群では内皮下層、内膜浅層に濃染されたが、異常血流群では全層に均等分布し、内皮下層での濃染域がなかった。異常血流群では、内皮下層の基質合成に異常が起り内膜肥厚を誘発することが示唆された。 (3)肥厚内膜における細血管新生:吻合部では、縫合系が血管壁を貫通する組織裂隙に内皮細胞が浸入配列し、内腔由来の細血管が新生され吻合部肥厚内膜に網状に分布した。内腔由来新生血管と外膜栄養血管との交通はあまりみられなかった。仮性内膜が250ミクロン以上に肥厚した場合に著明な細血管新生がみられた。 2.血管内皮細胞、平滑筋細胞の増殖及び制御因子:犬大動脈内皮細胞、平滑筋細胞を細胞培養し、細胞増殖促進因子、制御因子を検討した。内皮細胞マイトゲンは用量依存的に細胞増殖を促進し、TGB_1は明らかに増殖を抑制した。細胞増殖抑制に対する薬物の効果は、塩酸ベラパミルの高濃度で増殖抑制の傾向がみられたが,ステロイド,プロスタグランディンE_1,アルガドロバンの常用量では抑制効果がみられなかった。
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